2年がかりのプロジェクト終了に寄せて

もう1ヶ月ほど前になるが、地上波で携わった番組がオンエアされた。2年以上に及ぶ長期プロジェクトだった。放送後も何だかんだと対応があり、昨日でようやく区切りがついたような状態だ。

番組自体は好評だった。目立って視聴率が取れるような番組ではないが、モニター調査でも、ネットでも、評判は極めてよかったように思う。何よりも嬉しかったのは、伝えたいメッセージがきちんと届いていたということだった。

今回の番組はドキュメンタリー。たくさんの人が関わる、ある建設プロジェクトを追いかけた。

構成上、一人の人物を主人公のように取り上げている。だがその主人公はプロジェクト全体を管理する立場であり、実際に彼が何か作業をするシーンというのは、実はない(正しくは「ほとんどない」)。彼はあくまでそのプロジェクトの時間的な推移を追いかけるために番組の軸として据えられている。

得てして、ドキュメンタリーの主人公というのは構成上の「ヒーロー」となり、彼の知恵や力でピンチを切り抜けていく。シンプルにいえばNHK「プロフェッショナル」の世界観である。ところが現実はそんなことなどほとんど起きない。

今回の番組で取り上げた建設の現場で言えば、全権を負う立場の者がいて、ある箇所の現場の進捗を管理しトラブルを解決する監督がいて、さらに現場のボルトをとめる職人がいて…。全員がそれぞれの責任を全うしている。

図面通りには進まない現場に、全員が知恵と勇気を持って立ち向かっていく。ヒーローなどは、どこにもいないのだ。でもナレーションでは一言もそんなことを述べなかった。現場を見せた、それだけだった。

こうした作りの番組に対して、感想を読んでみると、現場の職人の技術にシンプルに感動する人もいれば、主人公の責任の重さに感じ入る人もいて、つまりはそのプロジェクトに携わった人すべてが尊いことが、見ている人それぞれに伝わったことが見て取れた。

僕が伝えたかったのは、まさにそこだった。嬉しかった。

現場の撮影に手間と時間、体力、すべてを注ぎ込んだ。編集マンのおかげでその素材が見事に立ち上がり、映像が番組となった。こちらの制作プロセスにもいろいろなことがあったが、とにもかくにも、実は一番伝えたかったことがきちんと届いたのだという手応えを感じている。

テレビの未来はやっぱり明るくはない。でも、手間と時間をかけたコンテンツであれば、テレビというメディアではなくても、何かしらの形で生き残っていくことはできるはずだと、信じられる出来事だったと思う。